生理中の頭痛や吐き気はなぜ起こる?めまいや寒気などの症状が伴うことも

「生理のたびに頭が痛くなる」「吐き気やめまい、寒気まであるけどこれって普通なの?」そんな不安や疑問を抱えている方へ。

この記事では、産婦人科医かつ心理カウンセラーの視点から、生理中に起こる頭痛や吐き気、寒気、めまいといった症状の原因をわかりやすく解説しながら、心と身体をいたわるための対処法とセルフケアを詳しくご紹介。

「わたしだけじゃないんだ」と思えること、「対処できる」と知ることが、安心への第一歩です。

生理中に起こる症状とは?

よくある不調の一覧

  • 頭痛
  • 吐き気・嘔吐
  • めまい
  • 寒気・悪寒
  • 倦怠感
  • 腹痛
  • 下痢
  • 背中や腰の痛み

これらの症状は単なる“気のせい”ではなく、生理によってホルモンバランスが乱れたり、身体に変化が起こっているサインでもあります。

特に複数の症状が重なると日常生活にも支障をきたしやすくなります。

なぜ頭痛や吐き気が起こるの?

ホルモンバランスの急変

エストロゲンやプロゲステロンといった女性ホルモンは、体調だけでなく脳にも大きく影響を与える物質です。

特に月経前から月経開始にかけてエストロゲンが急減することにより、セロトニンなどの神経伝達物質が不安定になり、片頭痛の引き金になると考えられています。

この変動に敏感な体質の人は、生理が始まる直前や最中に強い頭痛を感じやすくなります。

プロスタグランジンの過剰分泌

プロスタグランジンは子宮の収縮を助ける物質ですが、量が多すぎると消化器官にも刺激を与えてしまいます。

その結果、胃のむかつき、吐き気、嘔吐、下痢が起こることも。また、全身の血管を収縮させるため、寒気や悪寒の原因にもなります。

さらに、プロスタグランジンが過剰に出ているときは、痛みへの感受性も高まっているため、ちょっとした刺激でも強い痛みを感じやすくなります。

自律神経の乱れとその影響

生理前後は自律神経が乱れやすい時期です。

交感神経が優位になると体が興奮状態になり、逆に副交感神経が優位になると疲労感や眠気、だるさが強く出ます。

このバランスが崩れると、体温調節がうまくいかなくなり寒気を感じたり、血圧や血糖値の変動でめまいが生じるのです。

また、精神的にも不安定になりやすく、軽度のうつ症状やイライラ、不安感などの情緒不安定さも症状の一因として現れます。

吐き気・めまい・寒気への具体的対処法

吐き気がつらいときのケア

  • 無理に食べず、消化にやさしいものを選ぶ(おかゆ・スープなど)
  • 胃を温める(カイロや白湯など)
  • つわりと似た状態なので、無臭・無刺激の環境で過ごす
  • 薬が飲めるときは、胃粘膜保護薬や吐き気止めを医師に相談

寒気・悪寒への対応

  • 体を外側から温める(腹巻き、湯たんぽ、カイロ)
  • 足首・首・お腹などの“冷えポイント”を重点的に温める
  • 温かい飲み物を摂る(生姜湯、ハーブティー)
  • 入浴で体の芯から温まる(38~40℃程度のぬるめのお湯)

めまいがあるときは

  • 急な立ち上がりは避け、座ってからゆっくり動く
  • 水分と塩分を意識して摂取(脱水・低血圧対策)
  • 横になる場合はなるべく頭を高くして安静に
  • めまいがひどい場合は耳鼻科や神経内科の受診も視野に

症状が重いときに疑うべき疾患とは?

放置してはいけないサイン

  • 毎回寝込むほどの頭痛
  • 吐き気とともに発熱がある
  • 薬が効かないほどの腹痛
  • 出血量が非常に多い、レバー状の塊が頻繁に出る
  • 情緒不安定が激しく、日常生活に支障をきたす

これらの症状がある場合、以下のような病気の可能性が考えられます:

子宮内膜症

本来なら子宮の内側にとどまるはずの内膜組織が、卵巣や腹腔内に広がることで、強い痛みや不妊の原因になります。

月経困難症

単なる生理痛ではなく、日常生活に支障をきたすレベルの痛み。ホルモン剤などでコントロールが必要な場合もあります。

PMDD(月経前不快気分障害)

生理前の情緒不安定が極端に強く、うつ病と診断されるほどの症状が出ることも。心理療法や薬物治療の併用が効果的です。少しでも異常を感じたら、我慢せず婦人科に相談することが大切です。

生理中をラクに過ごす生活習慣とセルフケア

食事と栄養でサポート

  • ビタミンB6:ホルモンバランスを整える(バナナ、鮭、鶏むね肉など)
  • 鉄分:出血による貧血対策に(レバー、小松菜、プルーン)
  • マグネシウム:神経や筋肉の緊張緩和(アーモンド、玄米)

また、加工食品やカフェイン、糖分の摂り過ぎは体を冷やしたり炎症を助長することがあるので、なるべく控えましょう。

睡眠とリズムを整える

  • なるべく毎日同じ時間に寝起きする
  • 就寝前1時間はスマホやPCを見ない
  • 深呼吸や瞑想、アロマなどで副交感神経を優位にする

睡眠の質が整うことでホルモンバランスも安定しやすくなり、症状の軽減につながります。

心のケアも忘れずに

  • 「今日はこれだけできた」と自分を認める
  • 好きな香りや音楽でリラックス
  • 我慢せず、しんどい日は「休む」ことを許す
  • 周囲に「今、生理中で体調が悪い」と伝える勇気を持つ

心と体はつながっています。

身体がしんどいときは、心にも負担がかかっています。

おわりに

生理中の頭痛や吐き気、寒気、めまいは決して“気のせい”ではなく、ホルモンや自律神経の影響による正当な身体反応です。

症状のメカニズムを理解することで、自分の体に優しくなれたり、正しいケアを選べるようになります。

「体がつらい」というサインは、無理をせず“ちゃんと休んで”という身体からのメッセージです。

あなたの身体の声に耳を傾け、少しずつでも心地よく過ごせる毎日を目指していきましょう。

そして、必要なときは医療や専門家のサポートを活用することも、あなた自身を守るための立派な選択です。

心と体にやさしい毎月を、一歩ずつつくっていけますように。