恋愛感情はあるのに、体が反応しない……パートナーとの関係が悪くなるのが怖い……性欲がない私はどこかおかしいのかな……こうした悩みを一人で抱えていませんか?
性欲はとても個人的で繊細な感情。
とくに女性は、心と体のバランスに大きく影響されやすいため、「性欲がない」と感じることは決して珍しいことではありません。
この記事では、産婦人科医であり心理カウンセラーの立場から、性欲が湧かない原因や背景、考えられる病気の可能性、そして前向きに向き合うための方法を、わかりやすく解説していきます。
あなたの心と体に、やさしく寄り添う時間となりますように。
女性の性欲とはどういうもの?
性欲=「自然な生理的欲求」
性欲は、食欲や睡眠欲と同じように、人間に備わっている自然な欲求の一つです。
ただし女性の場合、男性と違ってホルモンバランスや心の状態に影響されやすく、「波」があるのが特徴です。
女性の性欲は複雑にできている
女性の性欲は、以下のようなさまざまな要素によってコントロールされています。
- エストロゲンやテストステロンなどのホルモン
- 心の状態(ストレスや疲労感)
- 恋愛関係の安心感や信頼
- 過去の性体験やトラウマ
つまり、単に「体の問題」だけでなく、「心の状態」や「人間関係」も大きく関わっているのです。
性欲が湧かない…女性によくある原因
ホルモンバランスの乱れ
女性は、生理周期や年齢、体調によってホルモンバランスが変化します。
- 排卵期に性欲が高まることがある
- 更年期に入ると性欲が低下することがある
- ピルや避妊薬、ホルモン治療が影響することも
ホルモンの変化によって性欲が左右されるのは、ごく自然なことです。
心のストレス・疲労・プレッシャー
- 仕事や家庭でのストレス
- 人間関係の悩み
- 睡眠不足や過労
- 性に対する罪悪感やタブー意識
心が疲れていると、性欲は後回しになります。心身ともに余裕がないと、「性」に意識を向けるのは難しいのです。
パートナーとの関係性の問題
- 信頼関係が築けていない
- セックスに満足していない
- 相手に合わせなければと無理をしている
「好きな人なのに性欲が湧かない」という場合、心の奥で不安や不満が積もっている可能性があります。
性に対するトラウマや経験
- 過去に嫌な体験をした
- 性に対してネガティブなイメージがある
- 教育や文化の影響で「性は恥ずかしいもの」と感じている
これらは無意識のうちに心にブレーキをかけてしまい、性欲の減退につながることもあります。
病気や医学的な原因もある?
性欲が極端に低下している、または長期間まったく湧かない場合には、以下のような医学的原因も考えられます。
低テストステロン症
女性にもわずかながら「テストステロン(男性ホルモン)」があり、性欲に関係しています。
このホルモンが少なすぎると、性欲が極端に低下することがあります。
甲状腺の異常(甲状腺機能低下症)
代謝をコントロールする甲状腺の働きが弱くなると、疲労感や無気力とともに性欲の低下も現れることがあります。
うつ病や心の不調
うつ病の症状の一つに「興味や関心がなくなる」があります。
これは性欲にも影響し、まったく興味が持てなくなることもあります。
また、抗うつ剤などの服用によって性欲が落ちる場合もあるので、薬の副作用の可能性もあります。
女性性機能障害(FSD)
性欲の低下や性的反応の欠如、痛みなどの問題を「女性性機能障害(FSD)」といい、治療対象となることがあります。
性欲がないことへの罪悪感…どう向き合えばいい?
「性欲がない=欠陥」ではない
性欲は「強い・弱い」「ある・ない」で優劣がつくものではありません。
たとえパートナーがいたとしても、「今はそういう気分じゃない」と感じるのは自然なこと。
「他の人と違うからおかしい」ではなく、「私には私のペースがある」と思ってみてください。
他人と比べすぎない
ネットの情報や友達の会話などで、「みんなはもっと性欲があるのに…」と落ち込むこともあるかもしれません。
でも、それは表面だけを見ているだけ。
あなたの感じ方は、あなたにとっての正解。無理に周囲に合わせる必要はありません。
性欲を取り戻すには
自分の心と体にやさしくなる
「性欲がない自分」を否定せず、まずは受け入れてあげましょう。
- 疲れているなら休む
- ストレスが溜まっているなら発散する
- 一人の時間を大切にして、心の余裕を作る
心と体のリズムが整うと、自然と性欲も戻ってくることがあります。
自分の快・不快に敏感になる
- 何をしたときに心地よいと感じるか?
- 逆に、どんなことが嫌だったか?
自分の感覚を大切にすることで、性に対する興味や安心感が少しずつ育っていきます。
パートナーと正直に話してみる
パートナーがいる場合、無理に応じるよりも、正直に今の自分の状態を話すことが大切です。
- 疲れていて気分が乗らないだけなんだ
- あなたのことは好きだけど、今は余裕がないんだ
相手があなたを大切に思っていれば、その気持ちを理解しようとしてくれるはずです。
専門機関に相談するのも選択肢
もしも「何をしても改善しない」「体に違和感がある」という場合には、婦人科や心療内科、カウンセリングなどの専門機関に相談することをおすすめします。
あなたの悩みは、きっと誰かの支えで軽くなるはずです。
おわりに
性欲がないことで悩むのは、決して恥ずかしいことではありません。
それは「今の自分の心と体からのサイン」かもしれないのです。
人にはそれぞれ、ペースとタイミングがあります。
自分を否定せず、やさしく見つめながら、「どうありたいか」をゆっくり探していきましょう。
あなたがあなたらしく生きられるように、この記事が少しでも力になりますように。