「陰部に小さなしこりを見つけた。でも痛みはないし、どうしたらいいの?」「婦人科に行くべきなのか迷うけれど、人に相談しづらい…」
こうした陰部の違和感は、多くの女性が密かに悩み、不安になる症状の一つです。
実際、産婦人科外来でも「痛みのない陰部のできもの」で受診される方は珍しくありません。
この記事では、産婦人科医として、考えられる原因、セルフチェックの方法、受診するべきサイン、予防法とセルフケア、不安や恥ずかしさへの向き合い方、を丁寧に解説します。
「知らなかったから余計に不安だった」をなくし、少しでも安心してご自身の体と向き合えるよう、優しく具体的にお伝えします。
痛みのない陰部のしこり・できものの主な原因と特徴
脂肪腫(リポーマ)
皮膚の下の脂肪細胞が過剰に増殖してできる良性腫瘍です。
特徴
- やわらかく弾力がある
- 皮膚と同じ色
- ゆっくりと大きくなる
- 3~5cm程度になることも
通常は無症状ですが、座る・歩くときに圧迫される部位だと違和感が出ることもあります。
粉瘤(アテローム)
皮膚の毛穴や皮脂腺が詰まり、内部に角質や皮脂がたまって袋状になる良性の腫瘍です。
特徴
- 触るとコリコリとしたしこり
- 真ん中に黒点(開口部)がある場合も
- 放置すると大きくなる
- 細菌感染すると赤く腫れて痛み・膿が出ることも
バルトリン腺嚢胞
膣の入口の左右にあるバルトリン腺が詰まって液体がたまり腫れる状態です。
特徴
- 膣の入口の片側だけにできる
- 直径1~3cm程度
- 柔らかいふくらみ
- 無症状だが違和感を覚えることも
感染して膿瘍になると強い痛み・発熱・歩行困難を伴います。
リンパ節腫脹
鼠径部(足の付け根)や陰部近くのリンパ節が感染症・炎症の影響で腫れることがあります。
特徴
- 指で動かせるコロコロしたしこり
- 1~2cm程度
- 触れると弾力がある
- 通常は自然軽快する
尖圭コンジローマ
ヒトパピローマウイルス(HPV)による性感染症で、痛みのないイボ状のしこりができる病気です。
特徴
- 乳頭状・カリフラワー状のイボ
- 1~5mm程度
- 多発・広がることがある
- かゆみや違和感を伴うことも
性行為の経験がある場合は要注意です。
その他のまれな原因
・外陰ヘルペス(初期は痛みがないことも)
・皮膚がん(基底細胞がん・扁平上皮がん)※極めて稀
・皮膚線維腫・血管腫など良性腫瘍
「珍しいけれど念のため知っておくべき」原因もあります。
自宅でできる「しこりセルフチェック」
陰部のしこりは「自分で正しく観察すること」が重要です。
- ポイントは以下の6点です。
- 大きさ → 5mm未満か?1cm超えているか?
- 硬さ → 柔らかいか?硬いか?
- 形 → 丸い?イビツ?
- 色 → 皮膚色?赤い?黒っぽい?
- 変化 → 大きくなっている?変わらない?
- 分泌物 → 膿・血・透明液が出る?
観察は「できれば同じ時間帯・同じ姿勢」で数日間継続するのがコツです。
鏡を使った観察や、スマホで写真を撮り経過記録するのも役立ちます。
産婦人科へ行くべき「受診の目安」
以下のいずれかに該当する場合は早めに受診をおすすめします。
- 2週間以上消えない
- 急に大きくなる
- 赤み・腫れ・痛みが出た
- 膿や血が出た
- 複数個できてきた
- 性交痛やおりもの異常がある
- パートナーに同様症状がある
医師は視診・触診・超音波検査・必要なら細菌培養や性病検査で原因を特定します。多くは短時間で終わる検査なので怖がらなくて大丈夫です。
自分でできるセルフケアと予防法
- 下着や衣類は通気性の良い綿素材に
- 締め付けない服装を選ぶ
- 汗・おりものはこまめに拭き取る
- 外陰部をゴシゴシ洗いすぎない(弱酸性ソープ使用)
- ムダ毛処理は肌を傷めない方法で丁寧に
- 性行為時はコンドーム使用で感染症予防
- 栄養バランス・睡眠を整え免疫力を保つ
「普段の少しの工夫」がしこり予防につながります。
痛みへの不安や恥ずかしさを和らげる心の持ち方
- 「陰部のできものは決して珍しくない」と理解する
- 「自分を責めず、体からのサインを大切にしよう」と思う
- 「医師は何万人もの症例を診ているので恥ずかしくない」と安心する
- 「病気の早期発見は勇気ある行動」と自分を褒める
- 「医師にはプライバシー保護の義務がある」ことを知る
どうしても不安なときは女性医師を指名する・友人に同行してもらうなど工夫して受診ハードルを下げましょう。
おわりに
陰部の痛みのないできもの・しこりは誰にでも起こり得る、ごく身近な現象です。
不安になりすぎず、セルフチェックで経過を観察し、必要に応じて迷わず医師に相談することで「早期発見・安心につながる」ことが大切です。
この記事を参考に、自分の体に優しく目を向け、心身ともに健やかに過ごすヒントを活用してください。
あなたの体はあなたの大切なパートナー。困ったときは産婦人科医も必ず力になります。