「性行為に興味が持てない」「自慰の話をされても共感できない」
そんなふうに感じている人は、実はあなただけではありません。
周囲の友人が性の話で盛り上がっているのを聞いたとき、自分がその輪に入れないことで「私っておかしいのかな」「どこか問題があるのかな」と不安になる方もいます。
この記事では、産婦人科医であり心理カウンセラーでもある私の立場から、性に関心が薄いことがどういうことなのか、そしてそれが「異常」ではない理由をやさしく、わかりやすく解説していきます。
自分の性の感覚を否定せず、安心して前を向ける情報をお届けします。
性に興味がないってどういうこと?
「性に興味がない」は特別なこと?
- 性に興味が持てない
- 性的な欲求がほとんどない
- 性行為や自慰に嫌悪感を抱く
こういった感覚は、医学的には「無性愛(アセクシュアル)」や「性欲が非常に低い傾向」とされることもあります。
ただし、これらは「病気」や「異常」ではありません。
性の感じ方は本当に人それぞれで、強く興味を持つ人もいれば、まったく興味を持たない人もいる。それが自然な多様性の一部なのです。
社会やメディアの影響
現代社会では、性に関する話題があふれています。
SNSやテレビ、マンガやドラマなどでは、恋愛や性の描写が日常的に登場し、それが「普通」や「理想」として描かれがちです。
そのため、「自分はちょっと違う」と感じることが、まるで「異常」であるかのように錯覚してしまうのです。
それって「無性愛」かもしれない
無性愛(アセクシュアル)とは?
無性愛とは、他人に対して性的な魅力を感じにくい、あるいは感じない人のことを指します。
この言葉を初めて聞いた方もいるかもしれませんが、無性愛の人は少数派ではあるものの、確実に存在しています。
「誰にも性的欲求を抱かない」という感覚が、これに当てはまります。
また、「恋愛感情はあるけど、性行為に興味がない」という人もいます。これを「ロマンティック・アセクシュアル」と呼ぶこともあります。
自己認識の一つとして
無性愛は、病気や障害ではなく、一つの性的指向です。
LGBTQ+の中にも「A(アセクシュアル)」が含まれているように、多様なあり方の中で自然に認められるべきものなのです。
自分を責めたり変えようとする必要はまったくありません。
性欲の波は人によって違う
性的関心は固定ではない
性に関する関心や欲求は、生まれつき決まっているわけではなく、年齢や環境、ホルモンバランス、心の状態などによって変わることがあります。
思春期には性に興味がなかったけど、大人になってから徐々に関心が出てきたという人もいれば、その逆もあります。
いま関心がないからといって、将来ずっとそうとは限らないのです。
ホルモンやストレスの影響も
女性の場合、生理周期やストレス、体調不良、服用している薬の影響などで性欲が低下することは珍しくありません。
一時的に関心がなくなるだけで、体や心に問題があるわけではありません。
「興味がない」と言い出しにくい理由
恥ずかしさや否定される恐れ
性に関する話題は、とてもプライベートなものです。
特に、「性に興味がない」と公言することは、笑われたり変に思われたりするのでは…という不安がつきまといます。
そのため、誰にも言えず、自分の中だけで悩みを深めてしまうケースが多いのです。
共感されにくい孤独
周囲が恋愛や性について話している中で、自分だけがその話題に共感できないと、まるで「仲間はずれ」になったような気分になるかもしれません。
でも、あなたと同じ感覚を持っている人は必ずいます。目に見えにくいだけで、多くの人が同じような気持ちで悩んでいるのです。
無理に「普通」に合わせる必要はない
自分を否定しないで
「性に興味が持てない私はダメなのかもしれない」
そう感じたとしても、それはあなたが劣っているとか、おかしいということではありません。
性のあり方は十人十色。それぞれの心と体の感じ方に、優劣はありません。
他人と比べない
友人が性についてオープンで、経験も豊富に感じたとしても、それはその人のペースと価値観です。
あなたがあなたのままで生きることが、一番自然で心地よい生き方です。
性について悩んだらどうすればいい?
心療内科やカウンセリングを利用する
自分の性について悩みが深い場合や、日常生活に支障をきたすほどのストレスがある場合は、専門家のサポートを受けるのがおすすめです。
カウンセリングでは、あなたの思いや不安を否定せず、そっと受け止めてくれるはずです。
同じ気持ちを持つ人の声に触れる
無性愛について発信しているブログやSNS、体験談などに触れることで、「自分だけじゃなかった」と安心できることがあります。
仲間の存在を感じることは、自己理解と安心につながります。
最後に伝えたいこと
性に興味がないことは、恥ずかしいことでも直すべきことでもありません。それは、あなたが持つ一つの個性であり、尊重されるべき感覚です。
誰かと比べる必要も、自分を無理に変える必要もありません。
自分の気持ちに正直に、心と体を大切にして生きていってください。
もし不安や戸惑いがあるなら、信頼できる誰かや専門家に話すことで、少しずつ気持ちが楽になることもあります。
あなたの感覚も、あなた自身も、大切な存在であることに変わりはありません。安心して、自分らしい人生を歩んでいきましょう。