性器の奥がズキズキ痛む…考えられる原因と対処法

性器の奥がズキズキと痛む。そんなとき、多くの女性が「これは普通のこと?それとも病気?」と、不安を感じます。

しかも、その痛みがいつ来るかわからず、歩くのもつらい、生理でもないのに痛い、性交時だけ痛い…と、日常生活にも支障が出ることがあります。

周囲に相談しにくいデリケートな場所だけに、ひとりで抱え込んでしまう方も少なくありません。

この記事では、産婦人科医かつ心理カウンセラーとしての立場から、「性器の奥の痛み」に関するよくある原因や対処法をわかりやすく解説します。

もしも今、ひとりで悩んでいるなら、どうかこの情報が少しでもあなたの安心につながりますように。

どこが痛い?どんなふうに痛い?

「性器の奥が痛む」といっても、その感じ方や場所によって考えられる原因はさまざまです。

まずは、ご自身が感じている痛みの特徴を確認してみてください。

  • 鈍いような痛み?それとも刺すような痛み?
  • 座ったとき?排尿時?性交時?何もしていないとき?
  • 一度だけ?周期的?慢性的に続いている?
  • 生理周期や体調と関係がある?

こうしたポイントを把握することは、医師に相談する際にも非常に重要になります。

次に、考えられる主な原因について詳しくみていきましょう。

性器がズキズキ痛む場合の主な原因

子宮内膜症

性器の奥のズキズキとした痛みでまず考えたいのが「子宮内膜症」です。

これは、本来なら子宮の内側にあるはずの子宮内膜が、卵巣や骨盤の周囲など子宮以外の場所に発生・増殖してしまう病気です。

内膜症の特徴的な症状として以下が挙げられます。

  • 生理のたびに下腹部の奥がズーンと重く痛む
  • 生理前後に肛門の奥の方や膣の奥にズキズキした痛みがある
  • 性交時に奥が痛くなる
  • 排便時に激痛が走る

原因はまだ完全にはわかっていませんが、早めの治療が必要な病気です。

放っておくと不妊の原因になることもあるため、症状が思い当たる場合は、婦人科で相談をおすすめします。

骨盤内炎症性疾患(PID)

子宮、卵管、卵巣などの骨盤内臓器に細菌が感染して炎症を起こす疾患のことです。

クラミジアや淋菌などの性感染症が原因になるケースが多く、性行為経験がある方は特に注意が必要です。

クラミジア感染症、淋菌感染症、梅毒、性器ヘルペス、尖圭コンジローマ、HIV/エイズ、膣トリコモナス症、細菌性腟症、膣カンジダ症

PIDの主な症状は以下のようなものです。

  • 性器の奥がズキズキ痛む
  • 発熱や悪寒を伴う
  • おりものの量や色が変化する(黄色・緑色・悪臭)
  • 性交時や排尿時の痛み

感染が広がると重症化し、卵管閉塞や不妊のリスクも高まるため、早期の診断・治療がとても大切です。

抗生物質による治療が中心となるので、速やかに婦人科を受診しましょう。

卵巣嚢腫・チョコレート嚢胞

卵巣に液体や血液がたまった嚢(ふくろ)ができる状態です。

自覚症状がないまま進行することもありますが、大きくなると性器の奥の痛みとして感じることがあります。

特に「チョコレート嚢胞」は、子宮内膜症の一種で、痛みを伴いやすいのが特徴です。

  • 膣の奥や下腹部がズキズキ痛む
  • 生理が重くなる
  • 下腹部が張る感じがする

大きくなりすぎると捻転(ねじれ)や破裂の危険性もあるため、違和感を覚えたら早めに検査を受けましょう。

超音波検査で発見されることが多く、治療法には経過観察・薬物療法・手術などがあります。

性交痛・膣の緊張

性的な場面で「奥が痛い」と感じる方の中には、心因的な影響や膣の緊張による場合もあります。

以下のような原因が考えられます。

  • 性行為への不安や過去のトラウマ
  • 潤滑不足による摩擦
  • 筋肉の過緊張(膣痙攣)

このような痛みは「心の不安」と「体の反応」が密接に関わっています。

心理的なケアと身体的なケアを並行して行うことが必要です。

心療内科やカウンセリング、専門の婦人科を受診することで改善の道が見つかることがあります。

子宮筋腫

子宮にできる良性の腫瘍で、女性の3人に1人が経験するといわれています。

子宮筋腫の位置や大きさによっては、膣の奥や下腹部に痛みが出ることがあります。

  • 経血量が多く、生理が長い
  • 生理前後に鈍い痛みがある
  • 性交時に奥が響くような痛みがある

筋腫が大きくなると貧血や不妊の原因になることもあります。

定期的な婦人科健診でのチェックが大切です。

単なる生理痛や排卵痛の可能性も

性器の奥の痛みが毎月決まったタイミングで起こる場合、「生理痛」や「排卵痛」が原因のこともあります。

  • 排卵日前後に下腹部がズキズキする
  • 生理中、奥の方が重く痛む

特に排卵痛は“排卵の瞬間”に卵巣から卵子が飛び出すときに感じる痛みで、多くの女性が軽い痛みを経験しています。

一時的であれば大きな心配はいりませんが、痛みが強い・長引く・日常生活に支障がある場合は、一度婦人科に相談してみてください。

受診の目安:こんなときは婦人科へ

以下のような症状がある場合は、早めの受診をおすすめします。

  • 強い痛みがある・突然痛くなった
  • 発熱・悪臭・おりものの異常がある
  • 性交時に毎回痛む
  • 長期間、周期的に痛みが続いている
  • 避妊していないのに妊娠の可能性がない

早期発見・早期治療が大切な疾患も多いため、「様子見」で済ませずに受診しましょう。

特に、子宮内膜症や感染症、腫瘍などは時間が経つほどリスクが高まります。

病気じゃないのに痛みを感じることもある?

実は、検査で何も異常が見つからなかったのに、痛みが続いてしまう方もいます。

そのような場合、「過敏性骨盤痛症候群」「慢性骨盤痛症」などと診断されることがあります。

神経の過敏やストレス、心因的な要因が影響して、痛みのサイクルから抜け出せなくなってしまうことがあるのです。

痛みがあるのに理解されにくいという辛さもありますが、医療機関で適切な診断と治療を受けることで、改善は可能です。

あきらめずに、信頼できる医師に相談してみましょう。

痛みは体と心からのサインです

性器の奥の痛みは、とても繊細で人に相談しにくい悩みです。

でも、痛みには必ず理由があります。そして、あなたが悪いわけでも、我慢しなければいけないものでもありません。

婦人科の診察は緊張するかもしれませんが、あなたの不安に寄り添いながら丁寧に対応してくれる医師はきっといます。

まずは、痛みの種類や時期をメモすることから始めてみましょう。

あなたの体と心の声に、やさしく耳を傾けてあげてください。