生理前に涙もろくなったり涙が止まらなくなる

「もうすぐ生理だな…」そんな時期になると、ちょっとしたことで涙が出たり、わけもなく悲しくなったりしませんか?

自分でも「なぜこんなに泣きたくなるの?」「感情がコントロールできない…」と戸惑い、不安になる方も多いはずです。

実はこれは、多くの女性が経験するごく自然な「ホルモンのゆらぎ」によるものです。

産婦人科医の立場から、「なぜ生理前に涙もろくなるのか」「どうすれば心が少し楽になるのか」を医学的根拠と具体策を交えて優しく解説します。

あなたが自分を責めずに安心して過ごせるためのヒントをお届けします。

生理前に涙が止まらなくなる理由

PMS(月経前症候群)とは?

PMSとは「Premenstrual Syndrome(月経前症候群)」の略で、生理の約3〜10日前から始まる心と体の不調のことです。

日本では20代〜40代女性の70〜80%が何らかのPMS症状を経験していると言われます。

代表的な症状

  • 気分が落ち込む
  • 涙もろくなる
  • イライラする
  • 疲れやすい
  • 眠気や不眠
  • 頭痛・むくみ・乳房の張り

このうち「涙もろさ・情緒不安定」はPMSの典型的な心理的症状です。

ホルモン変動の影響

生理前になると「エストロゲン(卵胞ホルモン)」と「プロゲステロン(黄体ホルモン)」という2つの女性ホルモンのバランスが大きく変わります。

排卵後〜生理前

プロゲステロン↑
心身を安定させる働きもあるが、過剰で眠気・気分低下

エストロゲン↓
セロトニン(幸福ホルモン)分泌減少 → 落ち込みやすい

つまり「幸せを感じやすくする脳内物質セロトニン」が減ることで、些細な刺激でも涙が出やすくなり、情緒不安定になるのです。

ストレスとPMSの悪循環

日常のストレス、過労、睡眠不足、栄養不足があるとホルモンバランスはさらに乱れ、症状が強まることもわかっています。

「ただの性格の問題」「気合で乗り越えるもの」ではなく、心と体が密接に関わった“生理的な現象”なのです。

こんな症状は要注意「PMDD」とは?

PMSの中でも特に「涙が止まらない・気分が激しく落ち込む・怒りが抑えられない」といった精神症状が強い場合、「PMDD(月経前不快気分障害)」の可能性もあります。

PMDDはPMSの重症型と考えられ、日常生活や人間関係に支障が出やすい特徴があります。

PMDDの代表的な症状

  • 抑うつ感、絶望感
  • 極度のイライラや怒り
  • 極端な不安感
  • 涙が止まらず自己嫌悪が強い
  • 社会的な引きこもり傾向

「自分でコントロールできないほど涙が出てつらい」「生活や仕事に支障が大きい」場合は早めに婦人科や心療内科に相談しましょう。

治療法も確立されており、決して我慢する必要はありません。

今日からできる!涙もろさを和らげる7つの具体策

セロトニンを増やす「朝散歩・日光浴」

朝起きたら5〜10分だけでも朝日を浴びてみましょう。

日光はセロトニン分泌を促し、情緒安定・涙もろさ改善に効果的です。

トリプトファンを含む食事

セロトニンの材料になる「トリプトファン」を含む食材を意識しましょう。

例:納豆・豆腐・ヨーグルト・バナナ・チーズ・鶏むね肉・卵

血糖値を安定させる

血糖値の乱高下も情緒不安定を悪化させます。

  • 3食バランスよく
  • 間食はナッツやチーズなど低GI食品

マグネシウムを補う

マグネシウム不足はPMS悪化と関連します。

例:アーモンド・ひじき・ほうれん草・玄米

「今はホルモンのせい」とラベリングする

「私はおかしくない。これはホルモンの影響だ」と自分に言い聞かせることで、涙が出ても必要以上に自己否定せずに済みます。

信頼できる人に「今こうなんだ」と伝える

家族・パートナー・友人に「生理前で情緒不安定になりやすい」と予め伝えておくと安心して気持ちを吐き出せます。

漢方やサプリ、ピルの活用

婦人科で「加味逍遙散」「桂枝茯苓丸」などのPMS向け漢方や低用量ピルによるホルモン調整も有効な選択肢です。

医師に相談すべきサイン

以下に当てはまる場合は早めに婦人科や心療内科で相談しましょう

  • 生理前の涙もろさや落ち込みが毎月強く出る
  • 仕事や家事、人間関係に支障が大きい
  • 自分を傷つけたくなる思いが出る
  • ピルや漢方で改善しない

医師と話すだけでも「自分を理解してくれる味方がいる」と安心感が得られます。

パートナーや家族にできるサポート

  • 「ホルモンのせいなんだね」と否定せず共感する
  • 無理に励ましたり論理で説得しない
  • そっと寄り添い、話を聞く姿勢を持つ
  • 「何かできることがあったら言ってね」と伝える

パートナーや家族の理解があるだけで涙のつらさは半減します。

おわりに

生理前の涙もろさは「あなたの心が弱いせい」ではありません。

女性ホルモンと脳の仕組みがもたらすごく自然な反応なのです。

だからこそ「我慢しすぎず」「必要なら医師に相談し」「自分を責めずに優しくする」ことが大切です。

あなたはそのままで大丈夫。

この時期は無理せず、心と体にやさしい選択をしてみてくださいね。