生理のたびに風邪や発熱、下痢が出たり、腰痛が重くなるのはなぜ?

生理前になると風邪みたいにだるくなる…熱っぽさや頭痛、下痢、ひどい腰痛で毎回ツラすぎる…..そんな悩みを抱えながら誰にも言えずに我慢していませんか?

この記事では、産婦人科医かつ心理カウンセラーの視点から、生理のたびに現れる“風邪のような症状”の原因をやさしく解説しながら、心と身体をラクにするための対策やセルフケアの方法をご紹介します。

あなたの不調は、決して気のせいではありません。

それには明確な理由があり、適切な理解とケアで症状は軽減できます。

まずは「理由がある」ということを、一緒に理解していきましょう。

生理前・生理中に起こる不調の正体

PMS(月経前症候群)とは?

生理前の1〜2週間に起こる心身の不調の総称で、PMS(Premenstrual Syndrome)と呼ばれます。

症状にはイライラ、情緒不安定、眠気、乳房の張り、便秘や下痢、微熱、頭痛など多岐にわたるものがあります。

中には日常生活に支障をきたすほど重症な場合もあり、PMDD(月経前不快気分障害)という診断がつくケースもあります。

ホルモンバランスの影響

排卵後から生理前までは、黄体ホルモン(プロゲステロン)が増え、エストロゲンとのバランスが変化します。

これにより自律神経が乱れやすくなり、心身のバランスが崩れることがあります。

このホルモン変動は、まるで「見えない嵐」のように、私たちの心身にじわじわと影響してきます。

身体が“風邪のように感じる”理由

プロゲステロンの影響で免疫機能が一時的に低下することがあります。

その結果、風邪に似た症状(だるさ、悪寒、関節の痛み、微熱など)が現れるのです。

実際に風邪を引いていないのに、まるで熱があるかのように感じるのは、このメカニズムによるものです。

生理時の発熱や風邪症状のメカニズム

プロスタグランジンの影響

生理時に子宮内膜が剥がれる際に分泌されるのが「プロスタグランジン」という物質です。 こ

れは子宮を収縮させ、経血を体外に排出する役割を持っていますが、過剰に分泌されると全身の炎症反応が強まり、発熱、寒気、頭痛、下痢などの症状が出やすくなります。

また、プロスタグランジンは胃腸にも作用し、消化機能の低下や腸の過活動を引き起こすこともあります。

体温調整の変化

排卵後、基礎体温は黄体ホルモンの影響で0.3〜0.5度ほど上がります。

その高体温状態が生理直前まで続き、個人差によっては「熱っぽい」「ポカポカするけどだるい」といった感覚を生むのです。

これは風邪とは異なる生理的な変化ですが、体感として似ているため混乱しやすいのです。

免疫力とストレスの関係

ホルモンの波により免疫力が下がっているところへ、仕事や人間関係のストレスが加わると、体はさらに負担を受けます。

精神的ストレスは自律神経にも影響し、結果的に「風邪をひきやすくなる体質」になってしまうこともあるのです。

生理中に下痢が起こるのはなぜ?

子宮と腸の関係

子宮と腸は骨盤内で非常に近い位置にあります。

そのため、子宮が収縮する際に分泌されるプロスタグランジンの影響が腸にも及び、腸の動きが活発になりすぎてしまうことがあります。

これが「生理のたびに下痢になる」理由のひとつです。

食生活の影響

生理前はホルモンの影響で食欲が増し、甘いものや油っこいものを摂りすぎる傾向があります。

これにより腸内環境が乱れやすく、下痢を誘発する要因となります。

対策ポイント

  • 温かい飲み物(白湯、ハーブティー)で腸を落ち着かせる
  • 香辛料やカフェインは控える
  • 食物繊維は適量に(摂りすぎると逆効果)
  • 腹巻きやお腹を温める工夫も大切

腰痛が悪化する理由と対処法

子宮の収縮が腰に影響

生理中、子宮の収縮により骨盤周辺の筋肉が緊張し、腰痛として感じられることがあります。

また、もともと骨盤のゆがみがある人は、その影響がより強く現れる傾向にあります。

冷えがさらに痛みを強める

身体が冷えると筋肉がこわばり、血行不良が起き、痛みが強くなります。

特に下腹部や腰回りの冷えは生理痛を悪化させる原因のひとつです。

セルフケアのポイント

  • 湯たんぽやカイロで腰や下腹部を温める
  • ストレッチやヨガで骨盤周りを緩める
  • 入浴でリラックス(ぬるめのお湯が◎)
  • 必要であれば痛み止め(市販のNSAIDs)を活用する

どうしてこんなにツラい?

メンタルもホルモンに影響される

ホルモン変動は、脳内のセロトニン(幸福感を司る神経伝達物質)の分泌にも影響を与えます。

そのため、急に悲しくなったり、涙が止まらなくなったり、焦燥感に襲われることがあります。

気のせいではなく科学的な理由がある

これらの変化は医学的に説明がつくものであり、「我慢が足りない」「弱い」などという問題ではありません。

心のケアも大切

  • アロマや音楽、瞑想などで自律神経を整える
  • 信頼できる人に気持ちを共有する
  • 必要であれば婦人科・心療内科での相談を

病気のサインの可能性も?

放っておかない方がいい症状

  • 高熱(37.5度以上が続く)
  • 鎮痛剤が効かないほどの痛み
  • 嘔吐や出血が異常に多い

これらは、子宮内膜症や卵巣嚢腫、PMDDなどの疾患のサインである可能性があります。 自己判断せず、早めに婦人科での診察を受けましょう。

日常生活でできるセルフケアの工夫

食事と栄養

  • ビタミンB群(神経を整える)や鉄分(貧血予防)を意識
  • マグネシウムやカルシウム(筋肉のけいれんを抑える)も有効
  • 甘いものは少しだけ“ごほうび”に

睡眠とリズム

  • 睡眠不足はホルモンバランスを悪化させる
  • 毎日同じ時間に寝起きするだけで自律神経が整いやすくなる

心のケア

  • 「今日はここまでできた」と小さな達成感を大事に
  • SNSで同じ悩みを持つ人とつながるのも一つの方法

おわりに

生理のたびに現れる風邪のような症状や腰痛、下痢。

それは単なる気のせいではなく、ホルモンや自律神経の影響で起こる、れっきとした体の反応です。

「毎月のことだから…」と我慢するのではなく、正しく理解し、無理のないケアを取り入れてみてください。

あなたの身体は、ちゃんとサインを出してくれています。 その声に耳を傾け、もっと優しく、もっとラクに過ごしていきましょう。

そして、必要なときは「助けを求める」ことも、大切なセルフケアのひとつです。

あなたの不調には、理由があります。 そして、あなたが心地よく生きられるようになる方法も、必ずあります。